【開催報告】札幌市環境プラザ環境相談スペシャル講座「ゼロカーボンシティさっぽろとわたしたちの暮らし」

 6月3日(木)、環境相談スペシャル講座「ゼロカーボンシティさっぽろとわたしたちの暮らし」を開催しました。参加者は27名、札幌市環境都市推進部の方に、「札幌市気候変動対策行動計画」、「札幌市の市民向け補助事業」、「札幌市の再生可能エネルギーの導入の取組」、「札幌市の省エネ住宅の取組」について、それぞれ報告していただきました。

 オンライン講座の良さとして、芽室町やニセコ町、江別市など、市外からの参加もありました。また、大学生の参加もあるなど、幅広い年代の参加がありました。終了後のアンケートには、「ゼミの課題で今回参加させて頂いたのですが、説明がわかりやすく補助金の話などは今後の人生のためになりました。ありがとうございました。」「質問にも答えていただきわかりやすかったです。学生向けの企画なども今後してほしいと思いました。どういう支援が欲しいのかまだ決め切れていないので挑戦する準備が整ったら協力をお願いしたいです。」「札幌市独自の取り組みや2030年、2050年へ向けての目標を知ることができ良かったです。2050年までにほぼ再生可能エネルギーへ転換するということで、今から生活を見直していかなければいけないと感じました。今後機会があれば「日常で無理なくできる目標達成のための取り組み」を教えていただきたいと思います。」などの感想がありました。
 以下、お話の内容を簡単にご報告します。

(1)「札幌市気候変動対策行動計画」について[報告者:環境政策課 気候変動対策担当係長 林 恵子さん]

 札幌市は、令和3年(2021年)3月に「札幌市気候変動対策行動計画」を策定しました。この計画は、持続可能な脱炭素社会の構築に向けた気候変動対策を進めるための計画です。計画期間は2021年から2030年までの10年間ですが、2050年の目標と札幌市のあるべき姿を設定し、2030年の目標やその達成に向けた取組等を示すものです。

【2050年の目標と札幌市のあるべき姿】

2050年の目標は、温室効果ガス排出量を「実質ゼロ」とするというもので、化石燃料からの温室効果ガス排出量が大幅に減少し、吸収量との均衡が保たれている状態を意味します。2050年のあるべき姿として、「心豊かにいつまでも安心して暮らせるゼロカーボン都市『環境首都・SAPP‿ RO』」を掲げています。
 取組の方向は、次の3点。
①まず、第一に無駄なエネルギー消費を減らし、効率よく使うことで「エネルギーの有効利用」を図る
②その上でどうしても必要なエネルギーは、再生可能エネルギーへの「エネルギー転換」を図る
③同時に、吸収源対策として間伐、再造林などの適切な森林整備等を進める

【取組推進の視点のポイント】

  • 気候変動対策・エネルギー施策の推進が、環境・経済・社会に対しても効果をもたらすことを示して、全ての主体による連携・協働の取組を促進
  • 多くの人口を抱える大消費地として、道内の豊富な再生可能エネルギーや資源を活かし、二酸化炭素の排出削減や経済循環を推進
  • 公共施設や民間ビルなどの更新時期を逃さず、 省エネルギー化や再生可能エネルギーの導入などに向けた対策を強化

【2030年の目標とその達成に向けた主な取組】

 2030年には、温室効果ガス排出量を2016年と比較して55%削減することを目標としています。その達成に向けた取組の主なものとして、住宅・建築物の省エネ対策としてZEHやZEBの推進、建築物・地域等への再生可能エネルギー導入の推進、移動の脱炭素化の推進、省資源・資源循環の推進、森林等の保全・創出・活用の推進、ライフスタイルの変革・技術革新などがあります。

【市役所の2030年の目標】

 市役所は、自らの排出量の削減に率先して取り組む姿を市民・事業者へ示していくため、温室効果ガス排出量を2016年と比較して60%削減することを目標として、いろいろな取組を行っていきます。

【気候変動の影響への適応策】

 国が行った影響評価を参考としながら、札幌市に影響があると思われる6分野(自然災害、産業・経済活動・都市生活、健康、水環境・水資源、自然生態系、農業)を選定し、分野ごとに関係部局が現在実施している取組を集約・整理します。さらに、今後は、気候変動やその影響について、モニタリングや国・関係機関との連携により最新の科学的知見等の収集に努め、取組の有効性等を検証しながら、適応策の充実を図っていく予定です。
 詳細は、下記URLに、札幌市気候変動対策行動計画本編・概要版があります。
https://www.city.sapporo.jp/kankyo/ondanka/kikouhendou_plan2020/index.html

(2)「札幌市の市民向け補助事業」について[報告者:環境エネルギー課 環境エネルギー係長 堤 勝則さん]

 札幌市の特性として、産業部門が市内にないことから、家庭部門、業務部門、運輸部門で、市内の温室効果ガス排出量の92%を占めます。家庭部門は、省エネと再エネの促進で、業務部門は、オフィスの省エネ化の促進、運輸部門では、自家用車、トラックの次世代自動車化の推進で、温室効果ガス排出削減が可能となります。
 これらを進めるため、札幌市では、市民の皆さんを対象とした補助制度を設けています。

①再エネ省エネ機器導入補助金
 蓄電池やEV(電気自動車)と接続する太陽光発電、定置用蓄電池、エネファーム、地中熱ヒートポンプ、ペレットストーブが対象です。一般的に、太陽光発電には、停電時に発電した電気が使える「自立運転機能」があるので、導入の際には、その機能があるかを確認し、導入後は、使い方について確認しておくことが重要です。
https://www.city.sapporo.jp/kankyo/energy/hojo/kiki.html

②再エネ機器導入初期費用ゼロ事業補助金
 太陽光発電をリースで設置する場合に利用できます。リース期間中は、保守メンテナンスが無料で受けられるというメリットもあります。
https://www.city.sapporo.jp/kankyo/energy/zerohojo/zerohojo.html

③次世代自動車購入補助制度 
 電気自動車や燃料電池自動車、V2H充電設備(Vehicle to Home:ヴィークルトゥホーム、自動車に貯めた電気を家庭で使用できるようにするシステム)を購入する場合に利用できます。
https://www.city.sapporo.jp/kankyo/zidousya_kankyo/jisedai_hojo.html

(3)「札幌市の再生可能エネルギーの導入の取組」について[報告者:環境エネルギー課 再生可能エネルギー推進担当係長 鎌田 浩伸さん]

【これまでの取組】

 札幌市では、1998年から太陽光発電設備を市有施設に設置しており、令和2年度末までに、学校159校を含む210施設へ設置を行い、総導入発電容量は、約3,029kWです。また、全量売電を前提とした民間事業者に未利用地を貸し出して、太陽光発電を設置しているほか、地中熱、下水熱、雪、バイオマス(ペレット)等の熱利用の推進も行っています。
https://www.city.sapporo.jp/kankyo/energy/sapporo/torikumi.html

【課題】

耐震や老朽化の問題で、太陽光発電が導入できない施設もあることや、資金的な問題などの課題があります。

【再生可能エネルギーの利用拡大に向けた今後の取組】

  • 再生可能エネルギー100%電気の購入

例)時計台の再生可能エネルギー100%電気の購入
https://www.city.sapporo.jp/kankyo/pressrelease/documents/sapporotokeidaiprese.pdf

  • 札幌市の電力調達では、脱炭素化に取り組んでいる小売り電気事業者を選定する。(環境配慮契約法)
  • 民間事業者に市有施設の屋根を貸し出し、市有施設で自家消費を行う太陽光発電を、民間事業者が設置するソーラーPPA(電力販売契約)による屋根貸し。市有施設は、太陽光発電を設置した民間事業者に、電気料金を支払う。

 ①と②は、既に実施中ですが、③については、現在検討中。

(4)「札幌市の省エネ住宅の取組」について[報告者:環境エネルギー課 建築物ゼロエネルギー化推進担当係長 海鋒 明久さん]

 札幌市では、積雪寒冷地である地域特性に応じた温暖化対策を推進するために、札幌独自の高断熱高気密の規準である「札幌版次世代住宅基準」を策定しています。この規準には、ミニマムレベルからベーシックレベル、スタンダードレベル、ハイレベル、トップランナーまで5段階があり、ベーシックレベルでも、ZEH(ゼッチ)の最低限の規準を満たしています。また、スタンダードレベル以上の住宅に対しては、札幌市の補助制度があります。
https://www.city.sapporo.jp/kankyo/energy/zeh/zeh_toppage.html

【 ZEHとは?】

 ZEHとは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略で、ゼッチと呼ばれます。①外壁や窓などを断熱性能の高いものにして、エネルギーを極力必要としない建物とし、②高効率な暖房・冷房・給湯設備などを導入し、さらにエネルギーの消費を削減、③加えて太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入によって、年間のエネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した住宅のことです。2019年度のアンケート調査では、回答数(1842件)の内、約60%が、ZEH規準を満たしていました。

【ゼッチの集合住宅版 ZEH-Mについて】

 ZEH-Mは、昨年度末までに、国の補助を受けているものは、計画中も含めて市内に11棟。札幌市では、建築物環境配慮制度(CASBEE札幌)を設けており、今までは、20000平方メートル以上の建物の報告をもとめ、公開していましたが、今年度から300平方メートル以上の建物について、報告を求めるようになり、建物の断熱性能を札幌市のホームページで確認できるようになります。
建築物環境配慮制度(CASBEE札幌) https://www.city.sapporo.jp/kankyo/casbee/
 また、国の施策として、今後、住宅情報サイトにも目安の年間光熱費が表示される予定です。

【建築物の省エネ化を進めるその他の制度】

ゼロエネルギー・ビル(ZEB)やゼロエネルギー・マンション(ZEH-M)の建設に必要な上乗せ設計費に相当する費用として60万円~300万円を建築主等に補助。
https://www.city.sapporo.jp/kankyo/energy/hojo/zebzehm.html
家の改修で省エネ化を進めるため、窓や外壁の改修、暖房や給湯の高効率機器への変更などへの補助制度。
・再エネ省エネ機器導入補助金(太陽光発電・蓄電池、燃料電池:エネファーム、地中熱ヒートポンプエアコン)
https://www.city.sapporo.jp/kankyo/energy/hojo/kiki.html
・住宅エコリフォーム補助制度(窓、外壁の断熱改修)
https://www.city.sapporo.jp/toshi/jutaku/03reform/eco/eco.html

(5)みなさんから、事前に寄せられた質問への回答
(事前質問1)
 再生可能エネルギーが、大きな自然環境破壊を起こしています。棲息する野生生物をも巻き込んでです。 世界・国の推進を良い事に、滅多矢鱈に風車建設・バイオマス・メガソーラー等が乱立、 役所も企業も少し休んで現実を見るのが必要で大事ではないでしょうか。 自然環境破壊を如何お考えですか。よろしくお願い致します。
(回答1)
 再生可能エネルギーについては、メガソーラーのような大規模開発をイメージされることがあると思います。この計画を作る際のパブリックコメント・意見募集の際にも、再エネの拡大が、環境への影響につながるのでは?という意見がありました。札幌市の再エネの拡大に関する考え方としては、大都市でも導入しやすい住宅や建築物への太陽光発電の設置をメインにする方針です。一方で、メガソーラーなどの大規模発電施設が近郊で開発されることがあるかと思いますが、それは、環境影響評価法という環境への影響を事前に予測評価する仕組みがあります。また、札幌市などの大都市でする協議会で、環境影響の安全性の確保の部分で、ルールの引き上げを国に要望したりもしています。また、札幌市にも、環境影響評価の条例がありますので、その運用を通して、影響を減らすような取組をしていきたいと思います。

(事前質問2)
 機器導入の補助制度があり、活用もされると思います。ただ、どのような機器や補助制度があるのか、今の住居にはどんな取り組みがふさわしいのか、省エネ施工技術が確かな業者の紹介など、安心して気軽に相談できる窓口があるといいなと思います。開設する予定はありますか。
(回答2)
 企業さんを、札幌市で紹介するのは、難しいのですが、窓口として、札幌型省エネ推進企業会フラットエナジーというところがあります。https://sfe.jp

(事前質問3)
 札幌市が市有施設等で使用する電気の購入条件があれば教えてください。
(回答3)
 札幌市の電力業登録事業者のうち、環境配慮契約要綱に定める環境配慮基準点以上である事業者のみが市の一般競争入札に参加可能とする要綱を定めています。2021年度の電力の一般競争入札から実施します。札幌市の評価基準で70点以上の企業が入札に参加可能となります。
https://www.city.sapporo.jp/kankyo/management/ems_jyorei/youkou.html

(事前質問4)
 市民や事業者の再エネ導入には費用面や賃貸や築年数など建物の理由によってできないこともあります。購入する電気を選ぶことが一番早いと思いますが、CO2排出係数を重視し過ぎると、原発や化石燃料(クレジット、証書等で調整)した電気でもよいことになってしまいます。電源構成や再エネ導入(道内)にどれだけ熱心(投資している等)なのかなど、一覧で見る仕組みはできないでしょうか。或いはこうした調査を市民、NPOなどと一緒に行うことはできますか。
(回答4)
 市民や事業者の皆さんが、環境に配慮した電力を選ぶのに役立つ情報発信は非常に重要だと考えていて、その方法を、現在検討中です。具体的には、これから詰めていくところですが、各電力事業者さんの電源構成や二酸化炭素係数などをまとめて、札幌市のホームページの中で公表していくことを想定しています。

(事前質問5)
 札幌気候変動対策行動計画に市民、事業者が脱炭素に向けたライフスタイルを考え対話する機会とあってそのような企画などをやってみたいとも考えていますがやると決めた場合支援などありますか?
(回答5)
 大学生さんからのご質問、大変嬉しく思っています。札幌市としても、昨年度まで、市の主催でワークショップなどを行い参加していただく形での場所を作ってきました。今年度は、過去に参加していただいた方や、既に地域で活動している方・団体などと提携して、その方たち・団体等の企画を後押しできないかと考えているところです。アイデアなどをぜひ、市の方に相談していただきたいです。いろいろな支援の方法も含めて、一緒に創り上げて行けたら良いと思っています。

(事前質問6)
 ゼロカーボンシティの実現には市民の協力が絶対条件だと思うのですが、市の取り組みを知らない人が多いのが現状だと思います。最近はテレビや新聞を見ない人も増えています。そういった中で、市民全体に脱炭素の取り組みをどのように広めていきたいと考えていますか。
(回答6)
 非常に難しい問題、どのように効果的に情報提供ができるのかを常日頃から考えています。いろいろなチャンネルを使っていくというのがひとつ。ホームページもその一つ。今、道庁さんと一緒に、太陽光パネルの共同購入事業をやっているのですが、コープさっぽろさんの協力のもと、共同購入トドックのお知らせの中に、募集案内を入れていただいた。このように、いろいろな所と連携しながら、あらゆるチャンネルを使って、情報を発信していきたい。
https://group-buy.jp/solar/hokkaido/home

 また、ナッジという手法、行動科学の観点から、こういう伝え方をすると人は行動しやすいというような仕組みを取り入れて、みなさんの取組の後押しをすることも検討している。いろいろな新しい情報を踏まえながら、みなさんに伝えていきたいと思っています。
(参考)昨年開催したミニ講座「行動をそっと後押し ナッジってなあに?」の開催報告
https://www.kankyo.sl-plaza.jp/houkoku-nudge/